巨人、ヤンキースなどで活躍した松井秀喜外野手(38)は、 12月27日(日本時間28日)、ニューヨーク市内のホテルで現役引退を正式に表明した。
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はじめて松井選手を見たのが、
1990年 赴任先の金沢・石川県立野球場だった。

夏の県予選決勝戦、星稜高校の一年生四番として堂々のホームランを放った。
ヘルメット(頭)のでかい高校生という印象が今でも残っている。無論、まだ全国区の選手ではなかった。
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松井選手には「2つのできごと」が脳裏に焼き付いている。

一つ目は、1992年 高校三年生の夏の甲子園。

高校生とは思えない打球を飛ばす松井選手に恐れをなした明徳義塾高校の監督が全5打席敬遠という究極の策をとったのだ。
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この四球攻撃に対し、甲子園の観客はブーイングを浴びせ、メガホンやゴミを投げ入れて抗議した。

勝った明徳義塾高校が校歌を斉唱している間中、観客は容赦ない「帰れ」コールを浴びせ、校歌の声はかき消された。
試合後、高野連の牧野直隆会長が異例の記者会見を開いて、明徳義塾の四球攻撃に苦言を呈するという事態にまで発展した。そのため、この松井5打席連続敬遠は、全国的に物議を醸し、その年を代表する社会問題になった。



マスコミ報道が加熱するなか、高校野球はいかにも正々堂々と勝負すべき、またそうあらねばならない、というムードが沸き起こっていた。

多くの人が
気づかぬうちに高校野球を美談として扱おうとしていることや、明徳義塾の監督に批判の刃を向けたことに対し、わたし自身、違和感を覚えたことを昨日のように想い出す。

明徳義塾を批判する前に、それに何ら屈せず動じない松井選手の姿にもっとクローズアップすべきだったのに…。大手マスコミなどが煽ってしまった。
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私個人としては確かに松井選手と勝負して欲しかったという期待はあったが、当時、明徳義塾の取った作戦は妥当であったと思っている。ルールに反した訳でもなく甲子園で勝つために勝負するも勝負しないも、はたまた敬遠策を取るのもひとつの作戦である。どちらも野球。

野球規則のどこにも、「連続敬遠禁止」とは書いていない。


試合に勝つ為の作戦に、いちいち横槍を入れられてはたまらない。

高校野球は特別の規則に則ってやっている訳ではないし、何ら特別なものでもないのだから。

今もその気持ちに何ら変りはない。

二つ目は、WBC 出場辞退問題。

ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)第1回、第2回大会ともにチーム事情などでWBCには不参加だったことが今でも残念に思う。

第1回は王監督出場要請も辞退、第2回は球団からストップ。

王監督から直々に出場要請を受けるも、態度を保留。辞退の意を伝えた際には便せん10数枚の手紙を渡した。
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日本代表は、松井秀喜を四番打者に据える形が最強の布陣となるという周知の事実があった。

日本という故郷、そして日本代表という名誉が大事なのか、生活に直結するシーズンでの個人成績が大事なのか?そんな物議は、松井自身には一切責任はないが、一度でもいいからジャパンのユニフォームに袖を通して欲しかった。

野球を目指す子供たちにとって、ジャパンで活躍する松井選手の影響力は絶大であった。そのチャンスを逸したことが残念だ。

頭では分かっていても、どうしてもWBCを辞退した選手たちのことは頭から離れないのである。
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サッカーはそもそも国の代表に選ばれて出場することが全世界のサッカー選手共通の目標となっている。
 
しかし、野球のWBCは、近年多くの辞退選手が出て、国の代表という肩書さえくすんでしまいつつある。
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国を背負えば団結する韓国と、隣国日本では雲泥の差がないだろうか?
愛国心とか、教育の違いなのだろうか?

偏狭なナショナリズムをスポーツに持ち込むのも問題だが、公の為に奉仕する素直な心が日本人には希薄になっていないだろうか?
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オリンピックの正式競技としてIOC総会で2度否決されるまで日本人の多くは、野球というスポーツがここまで世界的に低く見られていることに気づいていないのではないか。

島国の日本にとって、アメリカから輸入した野球というスポーツは、最大の人気を誇っており、それがそのまま世界の評価であると錯覚していた節がある。

野球が世界のスポーツとして認められていない現状を考えると、WBCの発展なくして野球の将来も暗くなる。

なかでも日本はアジアの野球先進国としての責任がある。
ヨーロッパやアフリカ、西・南アジア、南米といった野球が普及していない地域に野球の魅力を伝える義務を背負っている。それをやらない限り、野球がオリンピックに復帰することはないだろう。
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プロ野球のOB達が毎年、名球会やマスターズリーグ、OB戦でお祭りをやっている場合ではないのではないか。日本プロ野球機構ともども野球の普及と発展、後進の指導にもっと目を向けてほしい。


プロ野球選手は、自分一人の力で今の地位を築いたのではない。少年時代、アマチュア時代から自分を育ててくれた指導者、チームメイト、家族、ファン、多くの関係者や支援者、周りの支えでここまでこれたに違いないし、誰一人例外はいない筈である。もちろんあのイチロー選手しかり。
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長期的な展望をすれば、WBCの日本代表に選出されることは、サッカーのW杯の日本代表やオリンピックの日本代表に選出されることと何ら遜色ないのである。

日本代表として選ばれ活躍する、それがファンや関係者、野球を愛する多くの人達に対する恩返しの一つにならないだろうか?

松井選手の引退報道に接して一抹の寂しさを禁じ得ないでいる。

日本のプロ野球界、そして、日本人選手は、そのことを踏まえて、日本代表に選出されることの重みを受け止めてもらいたい。